過去の棲家ver.ぴゅーらっくす 2013/04/11 UP





*過去の棲家ver.プラズマムヒより再掲載

物件名 SS小屋
探索日 2007年3月
廃墟開始 2007年
分類 飲食店舗
規模 中規模 1棟



高速道路のすぐ脇に、移築された明治の土蔵造りの蕎麦屋があった。



一部店舗の利便の為に改修されているものの、その作りはなるほど、明治の初期の建築様式だ。



名主の屋敷だった頃の明治初期に、勝海舟が訪れたという。その時の書が残る。



その書の写真。あまりうまい字には見えない。



蕎麦屋だったのだが、蕎麦そのものは好評だったようだ。他のメニューは今ひとつだったらしい。



字がいくつか欠けているのか、日本語として微妙な看板。天ぷらは不評だったらしい。



店内には至る所に建物の解説がある。見て回ることもできた。末永く残したかったのだろうが廃墟になった。



古い木造建築が好きな方にはたまらない梁の凝りよう。組み立てる大工も張り切ったことだろう。



隠し部屋もあった。雪国にあった土蔵形式の家なので、その強さは念が入っている。装飾も凝っていた。



隠し部屋に何が隠されていたのかはわからないが、屋根裏部屋は洋の東西を問わずファンタジーだ。



広間と梁。柱が少なくても保てる。電気以前の時代なので採光も考えぬかれた作り。



座敷には畳が残る。養生してある部分もあり、廃墟後に引き取ろうとした形跡がある。だが叶わなかったようだ。



職人の技が100年経過しても残っていた。だがそれも経済と効率の名のもとに消え去る。諸行無常。



和建築に洋館のような階段。そして露出した電気配線。過去と現在を繋ぐと様式美は犠牲にされる。



エアコンとコンクリが木造の有機的身体と同居する。サイボーグ建築でありハイブリッドと言えば聞こえはいい。



受信専用電話。積もった埃、捻れた配線。電話機がこの形だった時期が長く、電話機の標準モデルになった。



シースルートイレ。便器の配列が一望できるレイアウト。これが本来のトイレのあるべき姿なのかもしれない。



気になる装飾の施された引き出し。センス的には70年代のものか。補強もされておりしっかりした作り。



廊下の天井付近にスズメバチの巣。「泣きっ面にスズメバチ」という名言もあったようななかったような。



整った庭園は今では伸びきり、雑草が侵食を始める。廃墟の一歩はいつも植物どもから。そして雨漏りと続く。


おまけ


なぜか地下に温水プールがあった。ぬくみずプールではない点に注意が必要だ。



ロッカーが錆びてないということは、退去する前に排水処理を完全に行ったということ。大抵は錆びている。



プールに続く出入り口。消毒槽があり、ここで体表及び肛門の大腸菌などを殺菌しておく。



店舗とプールは繋がっており、蕎麦食ったその足でプールに飛び込む事が可能だった。需要があったかは謎。



男子コーチの更衣室。しかも保健室。もうエロマンガのシチュにしか見えない。ところで女子コーチ用は?



ボイラー室の古い呼び名。温水プールの水を温める機械。プールは後年には休業していたようだ。



湿った気体が金属の缶に封じ込められている。なるほどそれは汽缶と書きたくもなる。


おまけ おわり



TELコメント:


この地方在住の車でしょっちゅう移動する人なら必ず見ているのではないかと推察する物件です。

移築されたという由緒正しい建築物は何故か岩山の上に建てられトンデモ建築物な雰囲気を醸しだしています。

現役当時に残念ながら食事をしたことは無いのですが、スキーに行く際の待ち合わせの目印として良く利用を

させて頂きました。

不思議な構造と奇抜な外観。そして由緒有る建造物の移築という歴史。

飲食店廃墟としてはなかなかの物なのでは無いかと思いました。




pcfxコメント:


おそらく並々ならぬ覚悟と信念と文化へのこだわりがあったのだろう。同時にいろいろ経営の事も考えたのだろう。

その結果が要塞のような人工の岩山への移築であり、地下のプールだったと推察される。やりたい事が多すぎる

躁状態の人は、機会に恵まれた時、このようなモンスターを作り上げる事がある。妄想の具現化は奇天烈な建築を

生み出し、その特異性から残される事が多い。だがそれが中途半端な規模だった場合、狂人の世迷いとして

笑われて消えていく。この廃墟からもそういうにおいがした。




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